2014年に韓国を揺るがした「ナッツリターン事件」。
飛行機の機内で「ナッツの出し方」に激怒し、まさかの“機体を引き返させた”ことで一躍世界の話題になった人物がいました。彼女こそ「ナッツ姫」と呼ばれる趙顕娥(チョ・ヒョナ)元副社長です。
あれから11年――2025年現在、ナッツ姫はどうしているのでしょうか?
離婚、改名、そして資産差し押さえまで…まるでドラマのような転落人生をたどっています。ここでは最新情報をまとめてご紹介します。
「ナッツリターン事件」ってどんな事件?

事件が起きたのは2014年12月。ニューヨーク発の大韓航空機のファーストクラスで、ナッツ姫は「袋から出さずにナッツを出すなんてけしからん!」と激怒。
その怒りの矛先は客室責任者に向けられ、さらには飛行機をゲートに引き返させるという前代未聞の行動に。
この一件は韓国で大炎上し、世界中のメディアも「一袋のナッツで飛行機が戻った」と大きく報じました。事件名はもちろん「ナッツリターン事件」。この日から、彼女は“ナッツ姫”という不名誉なあだ名で呼ばれることになります。
韓国社会への衝撃と「ガプチル」問題
この事件は単なる個人の問題を超え、韓国社会の構造的問題である「갑질(ガプチル)」を浮き彫りにしました。「ガプチル」とは、地位や権力を背景にした横暴な振る舞いを指す韓国語で、社会的・経済的地位の高い人が下位の人に対して行う理不尽な行為です。
この事件が大きく炎上した背景には、韓国社会特有の構造問題がありました。
- セウォル号沈没事故直後で国民の不信感が高まっていた
- 財閥が特権を振りかざす「갑질(ガプチル)」文化への嫌悪感
- 貧富の格差拡大や世襲体制への不満
ナッツリターン事件は、単なるセレブのわがままではなく、社会的な怒りを象徴する事件として扱われたのです。
その後のナッツ姫…転落のシナリオ
事件後、ナッツ姫は裁判で有罪判決を受け、副社長の座を失いました。
しかし不運はそれだけでは終わりません。
- ブランド品の密輸疑惑で再び話題に
- 社員へのパワハラ問題が浮上
- 私生活では離婚訴訟に発展し、多額の財産分与を支払い
そして2023年には名前を「チョ・スンヨン」に改名。イメージ刷新を狙ったものの、過去のインパクトはあまりにも強烈で“ナッツ姫”の呼び名は消えることなく残っています。
さらに2024年以降は国税庁による資産差し押さえ報道が出るなど、財閥令嬢とは思えないほど厳しい状況に。まさにシンデレラストーリーの逆バージョンともいえる人生を歩んでいます。
2018年
3月:系列グループホテルの社長に復帰(平昌五輪の聖火ランナーとしても登場)
4月:母親と共に密輸入事件で起訴(海外で購入したブランド品を大韓航空経由で関税逃れ)
5月:フィリピン人研修生を装った不法雇用事件で起訴
2019年
4月:父親の趙亮鎬会長が死去(株主総会で会長職を失った約1ヶ月後)
弟の趙源泰氏が会長に就任(趙顕娥氏の会長就任は実現せず)
2019-2022年
離婚訴訟
2023年
「チョ・スンヨン」に改名
2024年1月〜2025年4月
江南区の高級マンション「ローデンハウス」(45億ウォン、約50億円)が4度にわたり国税庁に差し押さえ
一方、被害者の逆転人生
対照的に、事件でナッツ姫に叱責され不当に降ろされた客室責任者パク・チャンジン氏は、その後大きく人生を切り開きます。
政治の世界に挑戦し、さらにはパワハラ被害を相談できる団体「ナッツ」を立ち上げ、社会的な支持を集めています。
加害者と被害者が真逆の道を歩む展開は、多くの韓国国民にとって強い印象を残しました。
ナッツ姫が残した“教訓”
ナッツリターン事件から11年経った今でも、韓国では“権力を振りかざす横暴な行為”の代名詞として「ナッツ姫」が引き合いに出されます。
- 財閥一族の特権意識
- 職場でのパワハラ問題
- 社会全体の格差構造
一袋のナッツは、ただの機内サービスの問題ではなく、韓国社会の歪みを象徴する事件となったのです。
まとめ
ナッツリターン事件で世界を驚かせた“ナッツ姫”。
その後の人生は、改名や離婚、資産差し押さえと、波乱に満ちたものでした。
一方で、事件の被害者は社会的評価を高め、逆転の人生を歩んでいます。
まるで映画やドラマのような展開ですが、ここから学べるのは「権力を振りかざす行為は必ずしっぺ返しが来る」ということかもしれません。
2025年の今もなお、「ナッツ姫」の名は消えることなく語り継がれています。